玉野医療センターの設計プロポーザルでは、久米・宮﨑・山陽設計共同体が最優秀提案者に選定された。設計のコンセプトについて、株式会社久米設計医療福祉設計部上席主査の渡邊雅子氏に寄稿いただいた。
ECIによる設計
設計コンセプト
玉野市は、四国への玄関口として古くから栄えた街である。都市の人口が減少し高齢化が進む中で、地域の二つの病院が合併し、将来にわたり新病院を中心とした医療・介護の連携により、地域の医療連携の拠点となる病院を目指す。
敷地はかつての文化センターがあった場所に位置する。敷地形状に合わせ、エントランスのある西側に大きく開かれた形状とし、V字に開かれた中央部には、吹き抜けのあるホスピタルモールやラウンジを設け、患者を大らかに迎え入れるかたちを体現する。
建物の構造は、免震構造を採用することにより、地震時に建物の機能や活動が維持できる、災害に強い病院を目指す。敷地はマウンドアップし、高潮・津波から建物を守る。
病院機能については、次の5点を重視し計画にあたっている。
➊患者の上下移動による負担をできるだけ減らすために、外来や検査機能を1階に配置し、ワンフロア完結型外来とする |
❷診療の要となる救急部門には、画像診断部門や中央処置室を隣接させ、スタッフが連携しやすく機動力のある救急医療を目指す |
❸患者相談窓口や地域連携室をエントランスに近接して集約配置し、ワンストップで患者の相談にのれる体制とする |
❹全ての病棟にリハビリエリアを設け、回復期リハビリ病棟にリハビリ部門を隣接させることにより、患者の早期離床を促す |
❺明るく開放的な吹き抜けに面して大きなスタッフラウンジを設け、スタッフがリフレッシュでき、様々な職種同士の日常的な交流が生まれる空間をつくる |
2病院合併による病院のため、合意形成のためのヒアリングを何度も繰り返した。病室や水回りのモックアップを作り、実際の大きさをスタッフの方達と共に体感し協議を重ね、設計を進めている。
「コロナ禍の中、御協力いただいたことを、病院の方々、関係者の方々に感謝すると共に、地域に愛される病院となるよう、完成まで尽力させていただきます。」