CMとは、発注者の代行者であるCMr(コンストラクションマネジャー)が、中立性を保ちつつ、計画・設計・施工の各段階において設計・施工の発注方式の検討、工程管理、品質管理、法令遵守などの各種マネジメントを行う手法を示す。CMの導入により、基本構想や基本計画を踏まえた設計・施工での最適な発注方式の採用やスケジュール・予算の超過防止が可能となる。持続可能な病院づくりに有効として総務省も推奨しているが、具体的な内容や効果が報告される機会は少ない。こうした状況を鑑み、本稿では病院再生におけるCMの役割を特集する。
CM(コンストラクションマネジメント)とは
団塊の世代が75歳を超える「超高齢社会」となる2025年を間近に控え、健康都市が今まで以上に重要視されている。不可欠なのが適切な健康・医療・福祉サービスの拡充だ。特に病院は、地域医療及び地域包括ケアシステムを支える役割と大規模災害(自然災害や感染症)における医療活動の拠点としての役割、市民の健康管理や健康寿命延伸の役割など、時代に適した機能を発揮することが求められている。
国はそうした機能を強力に推進するため2014年の「医療介護総合確保推進法」及び医療法の改正により、「地域医療構想」を制度化した。目的は効率的で地域格差が少ない医療提供体制の構築で、将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床数を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4つの医療機能ごとに推計した上で、地域医療関係者の協議を通じて病床の機能分化と連携を進めている。
そうした大きな流れの中で病院の経営戦略を見直す際、大半の病院で必要となるのが施設の再整備だ。しかし、将来の病院経営を建築計画に反映させるのは簡単ではない。
原因は病院の特性にある。第一が、医師や看護師をはじめとする多職種の専門家がそれぞれの業務を行っているため、様々な立場から多数の要望が寄せられることだ。経営戦略の視点で取捨選択しなければ予算超過を引き起こしてしまう。第二が、社会の変化により医療政策や医療技術、建築コストが変わることだ。病院建築には少なくとも3~5年はかかるため、変化を見越した計画を立てねばならない。第三が、既存病院の機能を維持しながら建替えをしなければならないこと。工事中の患者やスタッフの安全な動線確保をはじめ、さまざまな配慮が求められる。第四が、多額の資金が必要であり、返済には通常数十年を要することだ。地域にとっての一大関心事であり、関係者はもちろん、地域住民への透明性や十分な説明が求められる。
そして第五の課題が、以上の経営戦略を踏まえた施設整備計画を担う専門家が多くの病院に不在なことだ。そこで注目されるのが、CM(コンストラクションマネジメント)である。
CMとは、発注者の代行者であるCMr(コンストラクションマネジャー)が、中立性を保ちつつ、計画・設計・施工の各段階において設計・施工の発注方式の検討、工程管理、品質管理、法令遵守などの各種マネジメントを行う手法を示す。CMの導入により、基本構想や基本計画を踏まえた設計・施工での最適な発注方式の採用やスケジュール・予算の超過防止が可能となる。持続可能な病院づくりに有効として総務省も推奨(本誌11頁参照)しているが、具体的な内容や効果が報告される機会は少ない。
こうした状況を鑑み、本誌では病院再生におけるCMの役割を特集する。巻頭では、佐藤利雄氏(地方独立行政法人玉野医療センター理事長)をお迎えし、岩堀幸司氏(健康都市活動支援機構理事)が対談した。公立・公的病院の統合再編の動向をはじめ、玉野医療センターの経営戦略と施設整備、さらにCM導入の経緯や役割についてお話しいただいた。
事例では、同センターの病院建替えについての詳細を病院の担当者や設計・施工会社の担当者にインタビューした他、DB(※1)による建設途中の白老町立国民健康保険病院や、ECI(※2)手法により建設を完了した三豊市立みとよ市民病院の開設準備について、自治体や企業の担当者に取材した。
最後に、そうした病院再生を支援する健康都市活動支援機構のCMについて、特徴とプロセス、実績を紹介している。
※1 DB(デザインビルド/Design Build):設計と施工の責任を単一の事業者またはJV(共同企業体)等の協力チームが一元的に担う方式
※2 ECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント/Early Contractor Involvement):設計段階から施工者が参画し、施工の実施を前提として設計に対する技術協力を行う方式